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思い出が痴呆を軽くする - 回想法

楠病院デイケアセンターで行われたグループオリエンテーションの記録をもとに、回想法の有効性を考えてみましょう。


回想法とは……

人は何かの刺激をきっかけとして浮かんでくる昔の回想、ずっと忘れていた記憶から呼びさませれ、懐かしい人と交わした言葉や昔口ずさんだ歌のメロディ、漂っていた香りなどまでが一瞬のうちによみがえることがあります。

特に高齢になると、過去の経験や出来事を回想することが増えるともいわれています。高齢者の回想の多くは「現実からの逃避」や「過去への回帰」など、どちらかというと否定的に取られがちです。しかし、この無意識に起きる行為を利用して、対象者の心理的安定を促すことができます。それが「回想法」です。


回想法によって期待できる効果

  • 不安感の軽減
  • 意欲の向上
  • 周囲への関心の高まり
  • 抑うつ症状の改善
  • 発語回数の増加
  • 問題行動の軽減 など

回想法の実例

くすデイケアセンターで施されたオリエンテーション形式の回想法の実施内容と結果報告です。

内容
グループ名 追憶(思い出話に花を咲かせましょう)
対象者 楠病院くすデイケアセンター 水曜日利用の15人(男3人 女12人)
年齢 72歳〜97歳、平均年齢は84歳
痴呆診断 アルツハイマー型痴呆1人
老人性痴呆10人
健常者4人
HDS-R
(痴呆度を計る値)
回想法実施前 0〜27 平均値16
居住形態 独居2人
夫婦2人
息子夫婦などと同居11人
施行期間及び頻度 毎週水曜日(10:30〜11:30) 計6回
場所 デイケアルーム
プログラム内容 前に生活史チャートを作成
  1. 自己紹介小学校入学の頃運動会
  2. 昔食べた物
  3. 学校時代
  4. 結婚子供の誕生
  5. 結婚生活〜子供の自立
  6. 現在未来
席順 1回毎に考慮して替えた。
観察記録 個人別継続記録
  1. 外見
  2. 興味
  3. 参加ぶり(積極的・消極的)
  4. 楽しんでいるか
  5. 集中しているか
  6. 他の参加者との交流(積極的・消極的)
の6項目について、
  1. 大変良好
  2. 普通
  3. 通常より良好ではない
で評価した。
評価
  1. HDS-Rの前後
  2. 参加時の様子、変化など

結果

HDS-R の変化・様子
名前 年齢 H12年11月 H13年8月 様子・変化
Aさん 79 18 20 調子を合わせる。4回5回が欠席だったので、6回目はわからない様子だった。
Bさん 84 - 7 発言意欲はあるが、声がでない。
Cさん 96 16 20 1回目は作話を用意。
Dさん 88 23 22 積極的であった。
Eさん 87 17 21 よくしゃべるが、人の話は聞かない。
Fさん 78 - 19 的を射た話をしていた。
Gさん 90 17 19 一貫して、私は人とは違うという態度であった。
Hさん 73 - 6 聞かれれば一言二言答える。
Iさん 88 23 24 普段通りであった。
Jさん 84 0 0 会話が不可能であるが、家族からの手紙を皆に紹介できた。
Kさん 78 26 28 普段通りであった。
Lさん 72 6 7 人の話を聞いて涙する。
Mさん 97 0 0 コミュニケーションが不可能。
Nさん 83 20 24 一番効果があがった様子。記憶が良くなった。
Oさん 83 27 23 初めはしらけていたが、途中から積極的になった。
  • ※ HDS-R は、30点満点で、満点が正常です。したがって低いほど痴呆があるということになります。
全体の様子

最初の頃は、自分のことを言うだけであったが、段々と人の話を聞くようになった。最終の6回目は、全員が「デイケアに来るのが楽しみです」「家族に良くしてもらって、幸せです」と言って、楽しい雰囲気で終わることができた。

考察

誰でも、自分のことを話すのは好きなので、聞き取りは簡単であった。6回目の日、全員が幸せの自慢話をして、ニコニコしていたので楽しく終わることができた。

HDS-R においても、多少効果がみられた。また、今まで知らなかった事の情報収集ができて、より親しくなれたような気がする。



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